業務中のPCに突然「ウイルスが検出されました」という警告が大音量で表示され、画面には「サポート窓口」の電話番号——。これがサポート詐欺(偽セキュリティ警告詐欺)です。公的機関の相談窓口にも相談が絶えない定番の手口で、個人向けの詐欺と思われがちですが、業務PCでの遭遇は珍しくありません。対処を誤ると、会社の口座やデータに被害が及びます。

サポート詐欺の流れ——被害は電話の後に始まる

手口の全体像はこうです。Web閲覧中に、広告や改ざんされたページ経由で偽の警告画面が表示される。動転した被害者が画面の番号に電話をかけると、大手IT企業のサポートを名乗る相手が出て、「診断のため」と称して遠隔操作ソフトをインストールさせる。そして「修理費」「サポート契約」の名目で、プリペイドカードの購入やネットバンキングでの送金をさせる——。

押さえておきたい最重要の事実は、警告画面が出た時点では、PCはほとんどの場合感染していないことです。表示されているのはブラウザ上の「ページ」にすぎません。被害の本体は、その後の「電話→遠隔操作→支払い」の側にあります。逆に言えば、電話をかけなければ、この詐欺はほぼ成立しません。

なぜ冷静さを失うのか——画面の仕掛け

サポート詐欺の画面には、人を動転させるための演出が詰め込まれています。

  • 全画面表示になり、デスクトップやタスクバーが見えなくなる
  • 大音量の警告音や、音声の読み上げが鳴り続ける
  • 「あと○分でデータが削除されます」といったカウントダウン
  • マウス操作が効かなくなったように見える
  • 「このまま閉じると状態が悪化します」という脅し文句

これらはすべて、ブラウザが標準で持つ全画面表示や音声再生の機能でできる「演出」です。派手さと深刻さは関係がなく、「消せないように見える=重症」ではありません。この仕組みを知っているだけで、遭遇時の動転はかなり抑えられます。

遭遇したときの対処

  • *電話をかけない。**これがすべての起点です。Microsoftをはじめ、実在の企業が警告画面に電話番号を表示してサポートへ誘導することはありません。画面に出る番号は例外なく詐欺側の窓口です。

画面を閉じる手順は次のとおりです。

  • Escキーを長押しする(全画面表示が解除される)→ そのままブラウザを閉じる
  • 効かない場合は Ctrl+Alt+Del からタスクマネージャーを開き、ブラウザを終了する
  • それでも駄目なら、PCを再起動する。閉じられたなら、それ以上の作業は基本的に不要です

電話をかけてしまった・遠隔操作ソフトを入れてしまった場合は、まず通話を切り、ネットワークを切断してソフトをアンインストールします。その端末で入力したパスワードは変更してください。業務PCであれば、自分で完結させずに必ず報告を——動き方はインシデント発生時の初動対応にまとめています。支払ってしまった場合は、警察相談専用電話(#9110)と、支払いに使った金融機関・カード会社へ連絡します。

会社としての備え——ルールは一文でよい

会社側の備えは、複雑な手順書より一文のルールが効きます。「業務PCに警告画面と電話番号が出たら、電話せずに情シス(または総務)へ連絡」。これを全員が知っているだけで、被害はほぼ防げます。

あわせて、報告した社員を責めない運用を徹底してください。「変な画面を出してしまった」と言い出せない空気が、遠隔操作ソフトの放置や金銭被害につながります。フィッシング対策と同じく、報告の早さが被害の大きさを決めます。朝会や研修でスクリーンショットを一度見せておくだけでも、実物に遭ったときの落ち着きが違います。

なお最近は、偽の警告ではなく偽の「確認画面」で、ユーザー自身にキー操作やコマンド実行をさせる亜種が増えています。代表格のClickFixについては改ざんサイト経由で進行中のキャンペーンの記事で解説しています。

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